音楽番組やイベント紹介などで、近年になって様々な新しい言葉が使われていますが、その中でも『ラップ』や『リリック』という言葉は、抜きんでて多く使われ始めていますよね。
あまり身近に感じられない言葉の為、「でも意味は解らないんだよなあ」という方も多いのでは?
今回はそんな貴方の為に、『ラップ』という言葉を中心に、『リリック』などの用語も併せて紹介していきたいと思います。
意外と知っているつもりでも知られていない事もありますし、知っていれば身近なところで使われているのに気づいて、親しみを感じる事もできるかもしれません。
どうぞ、気軽な気持ちで読んでいってくださいまし。
苦手な横文字、ラップやリリックとは?
ラップとはどんな意味なのたろうか?
ラップとは、『韻(ライム)を踏み』、『リズミカルな演説』と『ストリートの言葉』を組み込んだ、音楽手法や歌唱法の一つであると言われています。
社会的な主張をしたり、個人を称賛あるいは批判したり、自分の思いのたけを表現する為に使われる事も多く、メロディを必要としない為場所を選ばず、どんな時でも表現する事ができ、近年では国内でも大会が開かれる程に認知されていっています。
日本では『ラップ』と呼びますが、その他にも海外では『ライミング』『スピッティング』『エムシーイング』とも呼ばれ、これをする人の事を『ラッパー』『MC』と呼びます。
ラップの語源は『会話する』という意味で、転じて『会話するように歌う』事から、ラップと呼ばれるようになったのだとか。
リリックとは何だろう?
ラップとセットで使われる事の多い『リリック』とは、日本語で『歌詞』『叙情詩』という意味合いの言葉です。
ラップにおいては叙情詩(心情や考えなどを表現したもの)を用いた歌詞を『リリック』と呼ますが、叙事(事件など、物事のありのまま表現する事)的なものも、時としてリリックとして扱われるようです。
韻を踏むとはこういうこと!
韻はラップにおいて特に重要な要素
ラップを構成する要素の一つとして特に知られているのが、『歌詞で韻を踏む』という事。
歌の部分でリズミカルに、それでいて聞き取りやすく表現する為、他の歌とは全く違った印象を与える事も多いと思います。
では、この『韻を踏む』とはどのようなことなのか。これを紹介したいと思います。
韻とは何なのか
『韻を踏む』の『韻』とは、詩文などで、一定の間隔や位置に並べられる、同一あるいは類似の響きを持つ言葉の事を指します。
この場合の同一というのは、『母音』と『響き』が同じという意味で、例えば『意思』と『西』、『染み』という言葉は母音も響きも同じ為、韻を踏んでいると言えますが、同じ『いし』という読みでも『石』では響きが異なる為、韻を踏む事にはなりません。
韻には頭だけ合わせる『頭韻(とういん)』や、後ろだけ合わせる『脚韻(きゃくいん)』と呼ばれるものもあり、歌を作る際にはこれを使う事でよりリズミカルに、印象的に、そして覚えやすいものとなる為、重要であるとされています。
ダジャレとは何が違うのだろうか?
実際にラップを聞いていると、その歌詞がダジャレになっているように感じる方も中にはいらっしゃるかもしれません。
それは流れる様に聞こえてくるフレーズの中で、同じように聞こえる言葉が続くからなのですが、韻を踏む事とダジャレとは似ているようで少し意味が異なります。
まず、韻を踏むというのは、母音と響きが一致した言葉を使う事を指します。
上の見出しでも紹介しましたが、『母音と響きがあっていれば同じ読みでなくともいい』のです。
それに対しダジャレとは、なんとなく似た様な響きの、同じ読みの言葉を並べただけのものを指します。
『かねがね考えたら金がねぇ』『布団が吹っ飛んだ』のようなものですね。
この為、ダジャレとして並べた言葉が韻を踏んでいる事もあり、韻を踏んだ言葉が結果的にダジャレになっている事もありますが、必ずしも韻を踏む事=ダジャレではありません。
また、ラップにおいては『意味が通る事も大切である』とされる為、ただ似ている言葉を並べればいいというものでもないようです。
勿論、意味が通っていて韻が踏まれているなら、それがダジャレであっても何の問題ありません。
日本語でラップを作ろうとすると、どうしてもこの『韻を踏む』というところから、意図しようとしまいとダジャレに繋がってしまう事が多いらしく、ラップやこれに関連する音楽表現を嫌う人や低く見たい人からは『ダジャレで歌ってるだけだろ』『ただのオヤジギャグじゃないか』といった批判も生まれるのですが、言葉遊びを用いて歌っているのですから、似ていたりダジャレの要素が含まれるのは当たり前なのです。
韻を踏む作文集
韻を踏んだ一文の例を挙げてみよう
『淡い想い甘い私 我が身騙し笑い話』
『想い』以外全ての母音が『アアイ』になっていて響きも近く、『想い』も『イ』が続く為脚韻となっている。
『踊る鼓動求むトーク 初老の旅情大いに望み』
母音は『大いに望み』以外は『オオウ』で、部分ごとに響きをまとめています。また、『大いに望み』の母音は『オオイ』で韻を踏ませています。
『ダラダラワガママ ただただ浅はか』
韻を踏む言葉に制限はなく、英語や擬音、造語なども使う事が出来ます。
ラップに関係する言葉たち
ラップには色々な関連用語が存在する
『ラップ』と『リリック』以外にも、ラップに関係する言葉が色々なところで使われています。
ここでは、その紹介をしていきたいと思います。
ヒップホップ・ミュージック
『ヒップホップ・ミュージック』をラップと同一視している方も多いかもしれませんが、ヒップホップ・ミュージックとは、ラップを含むリズミカルな歌(MC)を中心にした、ブレイクダンスやスクラッチ(DJ)、落書きなど、様々な要素の重なった音楽の事を指します。
つまり『ラップの要素を含んだ複合的な表現の仕方』というのが、正しいヒップホップ・ミュージックの意味であると言えそうです。
要素としてラップを含んではいるのですが、ラップそのものは、ヒップホップ・ミュージックが生まれる前から存在しており、ラップが広がった中の一つとして、ヒップホップ・ミュージックが誕生した、という形になっているようですね。
日本にラップが広まったのもこの形からとなりますので、ヒップホップ・ミュージック=ラップと誤解されやすいのだとか。
フリースタイル
近年ラップ関係のイベントとして大きく広がっているのが、この『フリースタイル』です。
フリースタイルとは、本来は無構成の音に自由な形のラップをあてはめ、歌にする事を指す言葉なのですが、近年では即興でリリックを考えてラップする事、といった意味も含むようになりました。
イベントなどで広まりつつある『フリースタイルバトル』では、このフリースタイルで二人のMCが即興のラップを作り、互いにリリックによってぶつかり合い、勝敗を競うというもので、他の音楽表現にはない、感情のままにマシンガンのように言葉を繋いでいく為、ある種の格闘技を観覧しているような不思議な高揚感を観客に与えるものなのだとか。
あくまで歌という形にはめ込みながらも熱いMC達の舌戦は、海を越え様々な国で繰り広げられているようです。
必要ならばディスりすらも許される文化
『ディスり』、あるいは『ディスる』とは、英語で言う所の『ディスリスペクト(尊敬の対義語)』、あるいは『dis(非や不)』といった意味合いの言葉で、『相手の事を馬鹿にしている』『とても失礼な言葉遣い』『相手の人格を否定している』といった、よくない表現に対して使われる言葉の為、一般には歌詞として用いると怒られる表現なのですが、ラップ、特にフリースタイルバトルなどの場においては、表現の為ならばこのディスりすら許されてしまいます。
ただしここで勘違いしてはいけないのは、ディスる事そのものは許されても、それそのものは批判や悪口以外の何ものでもないという事。
そうまでして伝えたい何かが感じられなければ聴衆は湧かず、却って対戦相手からの手痛い反撃を受ける事もあるという事です。
ただ相手を意味なく罵倒すればいいとうものではなく、聴衆が聞いていて湧くような、それでいて対戦相手が怒ったとしても頷かざるを得ないような、そんなパフォーマンスとしてのディスり方ができなければ、聞く者が呆れ、相手を怒らせるだけの悪口になってしまいますので、その辺りは注意が必要となるかもしれません。
まとめ
筆者は音楽にはあまり造詣が深くない為、「ラップってよくYoYoって言ってるアレだよね?」とか、「ヒップホップとラップの違いが今一解らないな」とか、そんな感じの認識を持っていました。
最後に紹介した『ディスる』という言葉も、ネットではよく見かけていたので、ネットスラングの一種か何かだと思っていたのですが、まさかこれがラップ用語だったとは思いもせず。
そんな感じで、調べていけばいくほど色々解るのが楽しくなり、あれやこれやと紹介してしまいました。
ラップあってのヒップホップな事や、あの独特の歌詞が単なるダジャレではなかった事など、今回の記事で分かった事も多いのではないかと思います。
今一苦手だなと思っていたラップも、こんな感じで解っていくにつれ、興味を覚え始めたと言いますか。
『そういえば昔こんな感じの番組あったなあ』と、最近だけでなく昔から足掛かりになるような番組があって、今の人気に繋がったんだなあ、という感慨深さも感じています。
どうぞこの記事を読んだ方が、これをきっかけに、筆者同様に少しでもラップについて興味を持ちますように。
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